≪陽動振り飛車≫
A図
陽動振り飛車は矢倉の出だしと見せ掛けて、突如振り飛車に変化する戦法だ。
初手から7六步、8四步、6八銀、3四步、6六步、6二銀、5六步に6四步から右四間飛車を見せて、7八金を強要してから飛車を振る。
A図が出だしの一例。
ここから2二飛と振るが、序盤の出だしによっては三間飛車も四間飛車も考えられる。
先手は玉を固めにくく、急戦を選びにくい。
居飛車と振り飛車両方を指しこなせる人でないと指せないが、名人戦にも登場したことのある有力な作戦だ。
今回紹介するのは、2021年1月29日発売の『永世乙女の戦い方』の第4巻です。
著者は「くずしろ」さん、監修は香川愛生女流三段、出版社は小学館さんで、ビッグコミックスペリオール掲載作品です。
今回は白熱するマイナビ女子オープンで絶対女王・天野香織との対局を目標にしている早乙女香に三面の顔を持つ女流期界の魔女・夏木小百合七段が立ちはだかる。
激闘の行方は果たして!?
ちなみに第5巻は6月末発売予定だそうです。
次回も楽しみですね。
≪角頭步≫
A図
角の頭を狙う戦法は多い。
角頭步戦法はその弱点を自らさらけ出す大胆な作戦だ。
先手でも後手でも使える。
初手から7六步、3四步に8六步(A図)と突く。
8四步と突かれると早くも角頭がピンチのようだが、2二角成、同銀、7七桂と跳ねて8五の地点を受ける。
そこで8七角が気になるが、6五角の切り返しがあって大丈夫だ。
後手が4三の地点を受ければ7八銀で先手良し。
奇襲めいているが、なかなかに味のある戦法だ。
なお近年は角交換振り飛車そのものが増えたことにより、角頭步戦法も見直されつつある。
今回紹介するのは2018年2月26日発売の『対中飛車 角道不突き左美濃』という本です。
著者は都成竜馬(となりりゅうま)先生、出版社はマイナビ出版さんです。
本書は「ゴキ中」対策として非常に使える戦法だと個人的に思っている。
狙いは単純で破壊力もあるのでハマれば格上の相手も倒すことができる作戦である。
左美濃(舛田美濃)に囲って端に角を上がって攻めるのであるが、その後の変化が相手の形によって実は意外と難しいところがあるが、強烈なパンチを相手に与えることができるので覚える価値はあるはずである。
私の知っている有段者の子が、「ゴキ中」使いの格上の同学年の子に、この戦法を大会で採用して勝利をおさめた時は、「有力な作戦」だと改めて思いました。
≪塚田スペシャル≫
A図
若かりし頃の塚田泰明九段が勝ちまくったドル箱戦法が塚田スペシャルだ。
相掛かりから、一度切った步を2四步と合わせ、後手の横歩と端攻めを狙うのが作戦の骨子である。
A図が基本図といえる局面。
ここで6四飛と取り、8八飛成(同銀は8六角の王手飛車)に6二飛成が用意の一手。
同金に8八銀と手を戻せば、角銀交換の駒損ながら先手には飛車を打ち込むスキがなく、後手は陣形をまとめづらい。
この攻めが強力で、先手が白星を重ね続けた時代があった。
B図
B図は当時、塚田泰明六段(当時)が16連勝した一戦である。
相手は、なんと羽生善治四段(当時)であった。
B図の7一金寄りは、塚田スペシャルの狙いの一つである6四飛~6一飛成のケアだが、ここから1五步、同步、1四步、2三步、2五飛、1六步、2六飛とゆっくり指すのがもう一つの狙いだ。
一気の強襲だけでなく、持久戦から少しずつ得を拡大する指し方もある。